少しの期待

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少しの期待

朝、昨日あれほど遅くまではしゃいでたというのに、楽しみでワクワクが止まらないペンティと並んで、ゆっくりと船から降りてくる人達を館のベランダから眺めていた。 長身で私たちより透き通った肌をしている。 船から降りてきたほとんどが男性で、太陽の光を初めて目にするのか、あまりの眩しさに目を細めている。 国の王様やえらい人達が歓迎の言葉を述べているなか、紺色の帽子を被った一人の青年に目がいった。他の男性達は、あまりの暑さに、長袖のシャツをまくっていたが、彼は、白いシャツの上に紺色のマントを羽織、深く帽子を被っていた。 「あの人、あんなに着たまんまで暑くないのかなぁ」 フッと疑問に思い口にしたら、「あの人が絶対に魔法つかいよ!」 そう大声で指を指した。 あまりに大きさに聞こえてしまったのか、帽子を被った青年がこっちにチラリと視線を送った。 サッとペンティは、後ろの陰にに身を隠してしまった為、私とバッチリ目が合ってしまった。 上を見上げると眩しいのか、若干目を細めながら手をかざしている。 彼の眼の色は透き通った青がかっていて、太陽に当たると一瞬色がグリーン色に反射してみえた。髪は、薄いグレーがかった色をしているが、髪もまた光に反射して、透き通ってみえた。 ナターシアは、慌てて首をブンブンと横に振り、私じゃないとの意思を伝えようとした。 言われた言葉がわからなかったのか、あまりの慌てようにおかしかったでけなのか、クスリとかすかに笑っただけで、また前へと視線を向けた。 私たちの髪の色とは、また違うのね。なんだかキラキラと輝いてて美しいわ。 あちこちで、ヒソヒソと女性たちが囁く声が聞こえる。 びっくりしたー。そう言いながら、背後から顔を出すペンティ。 「びっくりしたのは私の方よ!突然、何てことをいうのよ。」 「ごめんー、でも、あの人がもし本当に魔法使いなら、 頼み事あるんでしょ。 試さないより試した方がいいって。」 そう言うと、ポケットから一枚の紙を差し出す。 「実は、誕生日祝いに買っておいた!歓迎会のチケット。こないだずっと行きたかった、パンエリ島に連れて行ってくれてお礼もかねて。 今日の夜。場所は、お城の横の大広間公園。噂では、それぞれ特技を披露する事になってるんだって。 もし、魔法が披露される時があったら、あの人を見つけて、頼んでみて。」 もう一度、チケットを握りしめながら、彼の横顔を見ると、前を見据えたその凛々しい姿に胸が高まるのを感じた。
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