魔法の言葉

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魔法の言葉

夜、チケットを手に大広間の公園を訪れると、多くの人で賑わっていた。 キラキラと太陽の光が降り注ぐなか、見たことのない、お肉やフルーツがたくさん売り出されていて、目を奪われてしまう。 「あっちには、特製のお肉が売られてるんだって。食べに行ってみよ。」 人々は、楽しそうに駆け出していく。 「君も食べてみなよ。うちのシェフは一流の腕前。舌の上でとろけるよ。」 そう、外国語なまりのはいった言葉で、男の人たちが話しかけてくる。 「あ、え、っと。お金。あんまりもってなくて、、」 本当は食べたかったがお小遣いをかき集めた分しかもっていなく、断った。 すると、すぐ横に人が立つ気配を感じて目を向けると今朝の青年がたっていた。 背が高く、近くで横顔を眺めると、まつげも長く整った顔だちをしているのがわかる。年は、25くらいだろうか。 せっかく、この場に参加してくれた学生さんなんだ。文化を知るのは大事な事だろ。私がお金を出すから、食べなさい。」そう言って、美味しそうな脂が滴る串刺しのお肉を差し出す。 「そ、そんな、わけにはいかない、です」 そうして、彼がここにという戸惑いも隠しきれずに、慌てて断ろうとすると。 「はい、一口。」少し腰をかがめて、口に向かって差し出さられるお肉の塊から薫る香ばしい匂いに負けて、カプリとかぶりついていた。 「おいしい、、」一言そうつぶやくと。よかったと笑いかけた。ハンカチを取り出すと、口を拭ってくれる。 「さすが、星使い様はやることが違うね 」そうからかうように屋台の男性達がはやしたてると、あ、妹みたいで、つい。ごめんね。と照れたように頬を赤らめて横を向いた。 「星使いって。あなた、本当に魔法使いなの? 」 「んー、いや魔法使いというよりは、おまじないかな。いいことが起こりますようにって願ってかけるおまじない」 「こいつのまじないは、結構評判がよくて、病気が治ったなんて事は頻繁よ。お嬢ちゃんも、何か悩んでることがあったら、おまじないかけてもらいな。」 この人なら、治せるかも。そう思って、決心をした。 「お兄さん、私、この明るい太陽の下でもぐっすり眠れるようになりたい」 「眠れないのかい? 」 「本当に、ぐっすり眠ることができるのは、完全に真っ暗なクローゼットの中だけなの。私もベットの上でぐっすりと眠りたい。」 わかった。こっちにおいで。そう優しく話しかけると、小さい建物の中に招き入れられた。中はキラキラと光り輝く、光の粒が部屋一面に広がっていた。 「不断なら、ここは物置につかっているみたいなんだけど、今日は特別。 僕らの国のおまじないを体験してもらういい機会でもあるし、頼んだんだ。」 「この光輝いているものが、もしかして星?」 あまりの数にキョロキョロしながら聞く。 「そうだよ。僕らの大陸では、朝も夜も変わらずにこの星たちが頭上で光り輝いている。こっちでは、太陽が大陸を照らし続けているね。眩しさに驚いたよ。さぁ、こっちに横になって。ゆっくり目をつむって。俺だけの声に集中してほしい。 」 ベットよりもフカフカなマットに横になり、目をつむると、目の上に手が置かれたのが、わかる。太陽の眩しさは少しも感じず、彼の手の暖かさだけがじんわりと目に伝わってくる。 名前をまだ言ってなかったね。俺の名は、ヴェン。 身体の力を抜いて、リラックスして。 君の髪はサラサラで美しいね。 君は、不思議と俺らと近い属性の持ち主らしいね。 星の力と太陽の力を半分づつ感じる。太陽の眩しさで眠れないのは、きっとそのせいかな。 ちょっとだけ、俺の力をあずけよう。 (ん、首に何か書かれて、、) 君の首元に少しだけまじないを描いた。 そして、最後に、口づけを。、、ん。 これで、少しだけ星の力を抑える事ができるよ。 きっと、ぐっすり眠れるようになる。 おやすみ、ゆっくり寝て。目が覚めるころには、俺らは去ってる。 君がよく眠る事ができるように、毎晩君を想っておやすみの言葉を送ろう。 そして、今度は、君が会いにおいで。 星が広がる夜の世界へ。 カーテンがサラサラと揺れる音に気付いてはっと目を覚ますと、 ヴェンが書いたおまじないが首元に光っていた。 まだ、ゆっくりと髪をなでられた感触や柔らかくて湿った口づけの感触もまだ確かに残っている気がする。 「よかった、ナターシア。気が付いた?ヴェンっていう魔法使いがあなたの事を連れてきたのよ。もう、眠れるようになったから大丈夫だよ。って言って去っていったのよ。」 そう、うん、ほんとに大丈夫みたい。不思議と心が穏やかなの。 きっと、また会うようなきがする。 それまで、あともう少し眠らせて。 そうつぶやくと、ナターシアは、ゆっくりと目を閉じた。 「いいのか、ヴェン。彼女を置いていったりして。」 「ああ、大丈夫だろ。これで安心して眠れるはずだ。彼女は、もともと俺らの国の生まれ。父方が星。母方が太陽。交じり合ってはいけない血筋が交じり合ったんだ。彼女の身体に異変が出てもおかしくない。けど、俺が守り通してみせるさ。この先も。たとえ気づかれないとしても。 」 おやすみ。ナターシア。 そう呟くとヴェンは遠ざかる大陸を眺めながら、目を閉じた。
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