0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
眠れない夜
「じゃ、また明日ね。ナターシア」
さっき話してた事はくれぐれも内密にね。そう静かに言うと
友人であるペンティはゆっくりと扉を閉めた。
もう寝てしまってるこの館に住んでいる人達にバレてはいけないのだ。
その閉まった扉を眺め、キラキラとした明るい光が窓際から流れ込んでいた。
明るい太陽の日差しがカーテン越しに差し込んで身体がポカポカと温まっていくのを感じる。
(ここの人たちは、明るくても平気で眠れるのね。私には、眩しくてとても眠れそうにないわ)
夜が来ることのないこの町で、人々は明るい太陽がでている中
眠りにつく。
昔から、眠れるように色々な工夫をしてきたけど、全くもって効果はなかった。
さっきまで、ペンティと話をしていた内容を思い出しながらベットの上に置かれている一冊の本を手に取った。
知り合いからもらったといって、渡しに来てくれた。
パラパラとめくると、紺色の背表紙で10ページ程、簡単な説明文と挿絵で反対側の大陸の紹介がされていた。
その本を片手にベットではなく、人が一人で横たわれるくらいの大きさのクローゼットの扉を開く。
ここに枕と毛布を引いて眠ると光が入ってこずに安心して眠る事ができた。
そこにいつものように、横たわり扉を閉めると目を開けていても、一面真っ暗な世界。
『ねぇ、見て。この反対側の陸では、逆に太陽は上がらずに暗いままなんだって。でも、この空には数えきれない程の星が光っているらしいよ。』
目をキラキラと輝かせながら、興奮気味で勢いよく話してきた彼女を思い出し、こっちまでワクワクした気持ちになってくる。
そこの紹介文には、星空が光る中暮らす人達。暗闇の中でも、歌によってコミュニケーションをとっているとの説明書きがあった。
『その歌声によっては、魔法を使えるものもいるんだって。』
もうすぐ、18歳にナターシアにとって、それは流石に作り話なのではないかと思ったが、本当に魔法が使えるのなら静かに眠りにつかせて欲しい。
きっとそう願うだろう。叶えてくれるかまでは、わからないけど。
『そんな、反対側の大陸。アペーシオからお客さん達がくるんだって、明日!その人達に会いにいってみようよ。』
そう彼女が、話した言葉を思い出し目をつぶった。
最初のコメントを投稿しよう!