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「妃が君ひとりなら、多少の贅沢は可能だ。桓家は君のために金を出すだろうし、必要とあらば女官の数を増やすことも厭わない。ただ、妃がひとり増えれば、その妃のための侍女、女官、護衛が必要だ。使用人の衣食をまかなうための費用も必要だし、後宮を開けば衛士の他に厨房の料理人、掃除婦、洗濯婦、庭師などとにかく人を増やさなければならない。君の部屋を赤鴉宮に用意したのは、俺と同じ殿舎であれば使用人を最低限増やすだけで済むからだ。厨房ではこれまでひとり分だった食事をふたり分作り、掃除をする部屋はひと部屋かふた部屋増え、洗濯だって数枚の着物が増えるだけだ」
稜雅の説明に、蓮花はぐっと息をのんだ。
「君の侍女や猫くらいなら、王宮の負担にはならない。享は君が王妃として不自由なく暮らせるように支援すると言っている。反乱軍を援助することを思えば、王妃ひとりの生活費くらいはたいした負担ではなないそうだ。だが、享や他の大臣たちは、いまのところ妃が増えることは望んでいない。諸侯の中には金を出してでも自分の縁者を妃として後宮に入れたいと考える者もいるだろうが、後宮が使えないことを理由にしばらくは拒むことにしている」
「………………そう、ですか」
わかった、とは蓮花は言わなかった。
稜雅の理屈はわかったが、あくまでもそれは後宮を再開しない建前にしか聞こえなかったからだ。
「ちょっと、ゆっくり計画を練り直してみます」
「――――なにを?」
「わたしの、後宮をお妃百人でいっぱいにして王妃として君臨する計画」
「君臨!? 王妃は君だけだから、いまから君は王宮で王妃として君臨できるが」
「後宮で君臨したいの! でも、まぁいいですわ。こういうことは急いてはし損じると言いますものね。いきなり後宮のお妃を頭数だけ揃えるというのは賢いやり方ではないですわよね」
これから、いくらでも考える暇はあるのだ。
「え? ……諦めるとか、そういう考えは」
「ありませんわ。わたしの計画が甘かったことは認めますけれど、諦めるという選択肢は一切ございませんわ」
きっぱりと蓮花は言い切った。
「蓮花。ひとつ確認するが、君は王妃とはなんだと思ってるんだ?」
「王の妃。後宮の女主人」
「後宮の女主人というか、王の伴侶だろう? 君は俺と結婚して、俺の妻になるんだってことをわかって、ここに来ているんだ、よな?」
「えぇ、もちろん!」
勢いよく蓮花は頷いた。
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