四 華燭(一)

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 住み込みの女官たちの部屋は赤鴉宮のそばにある女官専用の宿舎で寝起きしている。ここにはさらに女官の世話をする使用人がおり、専用の厨房がある。下働きの者のための宿舎もあり、倖和殿だけでも百人を超える者が働いている。そのほとんどが、王妃の目に触れない。 (坎巾の乱が成功したから稜雅は王になったけれど、もしこれが失敗していたら稜雅は殺され、乱を支援していたお父様は処刑、わたしたちだって連座で一緒に処刑されていたはずよね)  後宮で隼暉が刺されていなければ、坎巾の乱は長引いていた可能性がある。  王都はさらに荒れ、反乱軍を支持していた民衆の心が離れていたことも考えられる。  坎巾の乱は国内を疲弊させたため、反乱軍を非難する者もいる。皆が隼暉の横暴によって苦しんでいたわけではなく、隼暉の失脚によって敗者となった者もいる。  貴族の中には、隼暉によって官位を与えられた者もいる。そんな官吏すべてが王宮から追放されたわけではないが、汚職を疑われて職を辞した者もいた。隼暉の腹心だった者の中には、財産を失った上、暴君を諫めなかったとして世間から非難されている者もいるそうだ。  隼暉の後宮から命からがら逃げ出した妃の中には、同じような目に遭っている者もいると聞く。 (隼暉王を暗殺して稜雅を王に即位させた場合、隼暉王を支持していた一部の諸侯が反旗を翻すだろうから、どちらにしても反乱は避けられないってお父様はおっしゃっていたけれど、世の中というものはなかなか単純明快にはいかないものね)  食後の満腹感は蓮花に多少の後ろめたさを覚えさせた。
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