羽化

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羽化

自分で自分を監禁した。 真っ暗な部屋に。 カーテンも壁紙もベッドも枕もシーツも床も すべて真っ黒に塗りつぶした。 外からの光も完全に遮断した。 テレビもない。 携帯の電源もoffにした。 これでいい。 音も光もない世界を 自分の部屋に作りあげた。 私は暗闇が好きだ。 ここで一週間、 人生のお休みをいただくことに決めたのだ。 私は可愛いと言われる。 顔ではなく、心が。 気配りがすばらしいと言われる。 「どうしてそこまで人に気を使う?」 と問われる。 「可愛いね」 「いい子だね」 そう言われ続けてきた。 言われれば言われる程に 窮屈になる。 そういう自分を演じなければならないから。 完璧でいなければならない。 そう思う。 プレッシャーが重くのしかかる。 限界だった。 人の為に怒り、 自分をないがしろにしてきた。 そんな自分が嫌いだ。 そんな私を皆は好きのようだ。 仕事は一週間の休暇をもらった。 この一週間、私はサナギになろう。 この真っ暗な部屋の中で。 何もせず、何も考えず、 誰とも会わず、飲まず、食わず。 すべてを空にして、 そして次に光を見る時、 私は羽化して蝶のように羽ばたこう。 好きに生きよう。 どうせ人は一週間ごときでは変われない。 生き様は変えようもない。 ただ、暗闇から抜け出したあかつきには 自分を誉め称えよう。 自分を好きになってやろう。 自分を認めてやろう。 まだ見たことのない世界へ羽ばたこう。 私以外のみんなは 私を好きでいてくれているのだから。
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