夕立

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夕立

 子供の頃は、よく泣いていた。  お気に入りのおもちゃを取られて。友達とケンカして。先生に叱られて。  成長するにつれて、涙の理由は変わっていった。  映画に感動して。試合に負けて。卒業して。  身も心も育ち切った頃、涙は誰にも見せなくなった。  アパートの一室で。深夜の公園で。ベッドのなかで。  しかし、今日は涙が止まらなかった。外に出ているのに。最高気温は32度。真夏の夕暮れ時は、短い間だけ空も一緒に泣いてくれる。そして洗い流してくれるようだった。    私の目から零れる涙も。心の喪失感も。両手に浴びたアナタの血も。    だけど、アナタとの3年間の思い出は、流れてくれないみたいだ。
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