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怒っているような声が恐ろしくて、隣を見られない。
「バーカ、黒崎。北野ちゃん、怖がってんじゃん」
長谷くんが後ろを振り向いて、笑いながらからかう。
あああ、余計なこと言わないでっ。
心の中では叫べても実際は何も言えずに固まっていると、机の上にバサッと教科書が投げ置かれた。
「俺、寝るから」
えっ。
驚いて思わず振り向いたけれど、黒崎くんはすでに机に突っ伏している。
声をかけることもできず、目の前に投げられた教科書と黒崎くんを交互に見て固まる私に、やりとりを見ていた長谷くんが「いつも寝てるからいいよ」と代わりに許可をくれた。
……いいのかな。
申し訳なさを感じながら、まだ新しい教科書を折り目をつけないようにそっと開く。
何度か目だけを動かしてちらりと黒崎くんを見たけれど、本当に寝てしまっているのか机に伏せたまま大きな岩みたいに動かなかった。
返す時には、ちゃんとお礼を言って謝ろう。
私のせいで授業を聞けなかったのなら、ノートも取っておいた方がいいかな。
あれやこれや考えて、ルーズリーフに彼の分のノートを丁寧に書き記した。
授業が終わり、ルーズリーフを綺麗に折りたたんで今日の単元のページに挟む。
そして、勇気をふりしぼって黒崎くんに話しかけた。
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