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☆
「それでね、怒って出て行っちゃったの」
私が今日あった一部始終を話すと、ブルーは優しい声でニャアオと鳴いた。
丸まった背中をなでながら、何度目かの後悔のため息が落ちる。
「あんな失礼なことされたら、誰だって嫌だよね……」
勝手に怖がって、呼ばれても顔も見ず、話しかけられても返事もしない。
黒崎くんが不快に思うのは当然だ。
自分のことに必死で、そんなこともわからなかった。
けれど、あの怒りのこもった声を思い出すと、今でも体が竦む。
頭ではわかっているのに、心の底にある恐怖は拭えなかった。
ブルーがまた優しく鳴いて体をすり寄せる。心を撫でるやわらかなぬくもりが、背中を押してくれている気がした。
「うん、明日ちゃんと謝るね。がんばる」
澄んだ青色の瞳がこちらを見上げる。
綺麗だな、と思いながらもう一度なでようとした時、ブルーの首元に何かが見えた。
顔を近づけて見ると、首輪に薄いピンク色の紙が結ばれている。
……手紙?
取って、と言うように、ブルーが私に向けて首を伸ばす。首輪の鈴が揺れて、また軽やかな音を鳴らした。
「じっとしてね」
私はブルーが痛くないようにそうっと結び目を解いて、その紙を取った。
ブルーが短くニャッと鳴く。
ドキドキしながら細く折りたたまれた紙をひろげると、中に綺麗な文字が見えた。
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