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『はじめまして
猫の飼い主です
昨日はかわいいリボンをありがとう
いつも遊びに行ってご迷惑ではありませんか?』
わ、わぁ……!
ブルーの飼い主さんからの突然の手紙に、さっきまでの暗い気持ちが吹き飛んだ。
ドクンドクンと鼓動が早鐘を打っている。自然と口元がゆるんでいくのがわかった。
これはきっと、昨日首輪の鈴を結んだリボンのことだろう。
勝手なことをして飼い主さんが不快に感じないか気になっていたけれど、喜んでくれているようで嬉しくなった。
「あっ、ブルー、ちょっと待っててね」
急いで自分の部屋に戻って、机の引き出しから刺繍風の花が描かれたお気に入りの便せんを取り出す。
少し考えて、私はできる限り丁寧な字で返事を書いた。
『お手紙ありがとうございます
遊びに来てくれてとても嬉しいです
いつもいろんな話を聞いてもらってます
ねこちゃんの本当の名前は何ですか?
私はこっそりブルーと呼んでいます』
大丈夫かな。失礼じゃないよね。
何度も読み返してから、丁寧に折りたたむ。それを縁側で待っていてくれたブルーの首輪に結びつけた。
「飼い主さんに渡してね」
ブルーは満足そうにひと鳴きして、塀の向こうに消えていった。
まだドキドキがおさまらない。期待と興奮で心が弾む。
もう一度手紙に目を落として、私はぎゅっと手のひらを握った。
「よし、ちゃんと謝る!」
明日はこの気持ちのまま、がんばれる気がした。
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