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みぞおちの辺りに、ぐっと力が入る。
「くだらねぇ」
続いて聞こえた吐き捨てるような言葉が、胸を突き刺した。停止ボタンを押されたように体が固まって動けない。
「黒崎っ。女の子に向かってそんな」
あわてて取りなそうとしてくれた長谷くんを無視して、黒崎くんが教室を出ていく。
……また怒らせちゃったんだ。
そのことだけはわかった。
「長谷! デリカシーなさずぎ!」
「いだだだだ! ちょ待っ、だってあんなの見たら誰だって……」
由真ちゃんに締め上げられて、長谷くんが悲鳴を上げる。それを止めることができないくらい、私は呆然としていた。
朝から謝ればよかった。
誰もいなくなるまで、待てばよかった。
後悔がぐるぐると頭をめぐる。
「……詩ちゃん、香奈か悠里に頼んで席を替わってもらう?」
夏梨ちゃんが労るように背中をなでてくれる。私はぷるぷると首をふった。
そんなことをしたら、また嫌な気分にさせてしまうかもしれない。それとも、替わってもらった方が黒崎くんの怒りはおさまるのかな。
どうすればいいのかわからなかった。
クラスの女の子たちが遠巻きにこちらを見ながら、何か話している。自己嫌悪と後悔が津波のように押し寄せてきた。
でも、絶対に泣いちゃダメだと思った。
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