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☆☆☆
「詩、ダラダラしてるなら先にお風呂入っちゃいなさいよ。テスト勉強するんでしょ」
「んー」
ママの催促に生返事をして、ごろりと寝返りを打つ。
午後8時になる前から、私は縁側に寝転んでブルーを待っていた。
ブルーをなで回したい。
ぷにぷにの肉球を触りたい。
モフモフに顔をうずめたい。
そうしないと立ち直れないくらい落ち込んでいた。
考えないようにしようとしても、お昼休みのことが頭の中で勝手に再生されてしまう。勉強なんて、まったく手につかなかった。
私は、黒崎くんに完全に嫌われてしまったようだ。
あの後の授業では、隣の席からはっきりと話しかけるなオーラを感じ取った。
黒崎くんは休み時間も放課後も教室からすぐいなくなってしまって、避けられていることは鈍い私でもわかった。
あの「くだらねぇ」は、勘違いしてはしゃぐ長谷くんに向けた言葉だと由真ちゃんはフォローしてくれたけれど、とてもそうとは思えない。
「次の席替えまで石になる……」
ため息まじりにひとり言をこぼして、ごろんともう一度寝返りを打つと、塀の上に灰色の影が見えた。
ブルーだ……!
勢いよく起き上がって、思わず正座。
ブルーは私を見つけてひと鳴きした後、庭へ降り立った。そのまましなやかな動きで縁側に跳びのる姿が、今日もとても美しい。
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