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「こんばんは、ブルー。今日のおやつは煮干しだよ」
一刻も早くなでたい気持ちをぐっと抑えて、煮干しを縁側に置いて近づいて来てくれるのを待つ。
近寄ってきたブルーは、すぐにはおやつを食べないで、頭をあげて首元を私に見せた。
「あ……」
首輪に結ばれた、淡いピンク色の紙。
すぐに昨日書いた手紙への返事だとわかった。
しぼんでいた心が、風船みたいにふくらんでいく。
ドキドキと高鳴る鼓動を感じながら、私はブルーの首輪からそうっと手紙を取り外した。
『こんばんは
お返事ありがとう
とても驚いたのですが、猫の名前はうちでもブルーです
青い目がとても綺麗だから名付けました』
わ、わわわ……!!!
素敵な偶然に心が弾む。興奮して思わず縁側から投げ出した足をバタバタとさせてしまった。
「ブルー」
新たな気持ちで名前を呼ぶと、役目を終えて煮干しを食べていたブルーがこちらを見上げる。それだけで嬉しくなって、つい口元がほころぶ。
私はすぐに返事を書いた。
何度も返すと迷惑かも、と少し考えたけれど、この嬉しさを伝えたい気持ちの方が大きかった。
『お返事ありがとうございます
とても嬉しいです
本当の名前もブルーと聞いてびっくりしました
青い目がとても綺麗ですね
ブルーは何歳ですか?』
これでやり取りが終わるのが残念で、図々しいかなと思いつつ質問を書いて次への期待に繋げる。
最後に名前を書くかどうか迷って、下の名前の「詩」だけを記した。
どうか、返事が来ますように……。
願いを込めながら丁寧に折りたたんで、ブルーの首輪に巻きつける。
「猫の郵便屋さん、お願いします」
私がぺこりと頭を下げると、ブルーは少し得意げにニャアオと鳴いた。
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