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かと言って、手紙にそのことが書いてあるはずがない。
それでも、黒崎くんからの手紙だと思うと、指先が震えてしまった。
……そうだ。
文通のことも話さなきゃ。
水泳の補習や朝陽くんのことに気を取られて、すっかり忘れていた。
いろいろ考えながら丁寧に折り畳まれた便せんをそうっと開いて、思わず「え?」と間抜けな声が漏れる。
『明日の朝4時に家の前に出てきてください』
手紙にはこの一文だけが書かれていた。
この他には、なんの詳細もない。
「これって、黒崎くんが書いたの?」
不思議に思ってブルーに尋ねても、当然答えは返ってこない。
黒崎くんは、私が文通相手だとは知らないはずだ。
じゃあこれは、黒崎くんの中では別の人宛に書かれたものなんだろうか。
「ううっ、朝4時に誰と会うつもりなんだろう」
だって、こんな時間に呼び出すなんて親密な相手に違いない。
その相手は私だけど、黒崎くんの中では私じゃないからややこしい。
……それとも、もしかして黒崎くんは気づいているのかな。
考えても答えは出ない。
光に透かしてみたり火で炙ってみたりして調べたけれど、隠し文字も見つからなかった。
「相手が私だと知ったら、黒崎くんどう思うかな……」
びっくりするかな。
それとも、ガッカリするかな。
怒ったりは……しないよね。
ぐるぐる考えても、やっぱり答えは出ない。
返事を催促するように、ブルーがニャアアアオと長く鳴く。
その声に背中を押されて、私は勇気を出して返事を書いた。
『待っています』
ドキドキしながら、それをブルーに首輪に結ぶ。
「黒崎くんに、渡してね」
招き猫にお願いするみたいに柏手を打つと、ブルーはびっくりしたようにピョンと跳ねた。
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