71人が本棚に入れています
本棚に追加
13.それはきっと、夜明け前のブルー
朝4時がまだ夜だということを、私は初めて知った。
部屋の中も窓の外も、まだ真っ暗だ。
そんな中起き出して、パパとママに見つからないようにこっそり身支度をするのは、悪いことをしているようでかなりドキドキした。
廊下はシンと静まり返っていて、いつもは気にならない床鳴りがやたら大きく聞こえる。
玄関の鍵を開ける音も、恐ろしいくらい響く気がした。
それでも、ママたちが起きてくる気配はない。
ホッと胸をなで下ろし扉を開けようとして、ふと傘立てに立ててあるパパの大きな傘が目に入った。
……手紙の相手は、黒崎くんだよね。
ブルーが届けてくれた手紙だから大丈夫だろうけれど、この暗闇のせいかちょっと不安になる。
念のためにそれを掴んでドキドキしながらそうっと扉を開けると、門に寄りかかるようにして立つ大きな人影が見えた。
ドキッとして、つい傘を刀のように構える。
じりじりと用心しながら近づくと、大きな人影がくるりとふり返り、
「……何してんの?」
聞き慣れた声とともに、門灯に照らされた黒崎くんの呆れ顔が見えた。
「おはよ」
囁くような声で言って、口の端を上げてちょっと笑う。
黒崎くんは文通相手が私だとわかっていたみたいに、全く驚くことなく普段どおりだった。
最初のコメントを投稿しよう!