13.それはきっと、夜明け前のブルー

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13.それはきっと、夜明け前のブルー

 朝4時がまだ夜だということを、私は初めて知った。  部屋の中も窓の外も、まだ真っ暗だ。  そんな中起き出して、パパとママに見つからないようにこっそり身支度をするのは、悪いことをしているようでかなりドキドキした。  廊下はシンと静まり返っていて、いつもは気にならない床鳴りがやたら大きく聞こえる。  玄関の鍵を開ける音も、恐ろしいくらい響く気がした。  それでも、ママたちが起きてくる気配はない。  ホッと胸をなで下ろし扉を開けようとして、ふと傘立てに立ててあるパパの大きな傘が目に入った。  ……手紙の相手は、黒崎くんだよね。  ブルーが届けてくれた手紙だから大丈夫だろうけれど、この暗闇のせいかちょっと不安になる。  念のためにそれを掴んでドキドキしながらそうっと扉を開けると、門に寄りかかるようにして立つ大きな人影が見えた。  ドキッとして、つい傘を刀のように構える。  じりじりと用心しながら近づくと、大きな人影がくるりとふり返り、 「……何してんの?」  聞き慣れた声とともに、門灯に照らされた黒崎くんの呆れ顔が見えた。 「おはよ」  囁くような声で言って、口の端を上げてちょっと笑う。  黒崎くんは文通相手が私だとわかっていたみたいに、全く驚くことなく普段どおりだった。
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