13.それはきっと、夜明け前のブルー

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「傘はいらないから置いて、後ろに乗って」  停めていた自転車に跨り、後ろを指差す。 「えっ、自転車?」 「ん、ばあちゃんの借りてきた。早く乗って」 「え、あ、あの、でも」  二人乗りするなんて初めてのことで、戸惑ってしまう。  これは、少女漫画みたいに横座りでいいのかな……。  馬みたいに跨がるのは、違うよね。  どう乗ればいいか迷いながらおそるおそる座ると、黒崎くんは私の手を掴んで自分のお腹に回させた。 「落ちないように、しっかり掴まってて」  わわわ……。  引き寄せられて、頬が黒崎くんの広い背中にピタッとくっつく。  口から心臓が飛び出てしまいそうなくらい鼓動が大きく跳ね上がった。  Tシャツ越しでもわかる硬い腹筋の感触に、ぼわっと頬が熱くなる。  もうどうしていいかわからなくて、私は石像のように固まった。  そんな私に気づくことなく、ゆっくりと自転車は進み始める。  カメラを入れてきたトートバッグを落としそうになって、ぎゅっと持ち手を握った。    もう片方の手で荷台から落ちないように黒崎くんに掴まりながら、私は到着するまでに頬のほてりがおさまることを願った。
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