13.それはきっと、夜明け前のブルー

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「ありがとう……嬉しい」  ……あれ。  お礼を言って隣に座り、ハッと気づく。  自然に受け入れていたけれど、私はまだ文通のことを何も聞けていなかった。  「あ、あの、手紙は……黒崎くんが書いたの?」  思い切って尋ねると、黒崎くんはちょっと気まずそうに首の後ろを摩り、 「ごめん。今日会ったらすぐに話そうと思ってたんだけど、北野が武士みたいに出てきた衝撃がすごくて忘れてた」 「うっ、あ、あれは……」  武士……そんなふうに見えていたなんて。  恥ずかしくて口ごもる私を、黒崎くんは目を細めてまたクスクスと笑った。  わわわ……。  隣に座って近づいたせいか、さっきよりも顔がよく見える。  最初の頃からは考えられないくらいの優しい笑顔に、ドキンと胸が高なった。 「俺、北野が文通相手だって、かなり前から知ってたんだ」 「えっ、前から?」  びっくりして、つい大きな声が出てしまう。  私が知ったのは夏祭りの夜だから、かなり前というと、それ以前なんだろうか。 「ん、ばあちゃんがブルーの首輪に手紙をつけて誰かと文通してるのを知って、騙されてんじゃねぇかって心配になってブルーのあとをつけたんだ」  確かに……猫に仲介してもらって文通しているなんて、怪しまれても仕方ない。  話を聞いて頷きながら、予想どおり黒崎くんが花さんの孫だとわかって、私はちょっと嬉しくなった。
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