13.それはきっと、夜明け前のブルー

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「結局、そのときは北野の家のあたりで見失ってわからなかったんだけど、遠足の帰りに送って行っただろ。あれで北野の家を知って、そのあと手紙を読んで間違いないなって確信した」 「遠足……」  そんな前から知られていたことに、驚きと恥ずかしさがこみ上げる。  よく考えれば、いっぱい悩みも書いたし恋についての質問までした。  もうひとりの花さんが黒崎くんだとわかってはいたけれど、改めて思い返してみるとすごく恥ずかしい。  黒崎くんは、私が書いた手紙をどう思って読んでいたんだろう。  さすがにそれは聞けなくてモゴモゴしていると、黒崎くんはそれを少し違うふうに解釈したらしく申し訳なさそうに頭を下げた。 「黙っていてごめん。ばあちゃんが手紙をすごく楽しみにしていたし、北野は俺を怖がっていたから言い出せなくて……というか、俺も楽しみだったから」    ちょっと照れたように口元をゆるませる仕草に、きゅうんと胸が甘い音を立てて軋む。  私も慌てて謝って夏祭りの夜に知ったことを打ち明けながら、彼の『楽しみにしていた』の言葉を心の中で噛み締めた。  黒崎くんも同じように思ってくれていたことが、すごく嬉しかった。 「あの、青い便せんは、黒崎くん……?」 「ん、ああ。ガラじゃねぇなって思ったけど……何かを見たり笑ったりしたら、北野に伝えたくなった。ブルーの肉球の形とか」  ぶっきらぼうな口調は、きっと照れ隠しだ。
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