3.前途多難な石の日々

4/7
前へ
/191ページ
次へ
「今から出席番号順に座って、班ごとに係を決めていってね」  先生が黒板に係名を書いていく。  私はこみ上げてくる嬉しさでゆるむ口元を、誰にも見られないようにしおりで隠した。    今日はこのことを手紙に書こう。  そう思いながら由真ちゃんの姿を探し、12番の席へと向かう。  由真ちゃんは、すでに同じ班の人と机をくっつけ始めていた。 「由真ちゃん、一緒の班だよ! 私、めちゃくちゃ美味しいカレー作るねっ」  嬉しくてたまらなくて、今からはり切ってしまう。  でも、振り向いた由真ちゃんは、微妙な表情をしていた。 「詩、がんばろうね。休むのは絶対ナシだからねっ」 「う、うん、休まないよ。どうしたの?」  不思議に思って聞き返すと、生温かい笑みを浮かべたまま、由真ちゃんの大きな目だけがゆっくりと動いて後ろを指し示す。  その視線を追って、私は彼女の表情と言葉の意味を知った。  あ……。  さっきまでのワクワクがすうっと消えていく。顔に出しちゃダメだと思ったけれど、落胆は隠せなかった。  そこには、不機嫌そうな黒崎くんが立っていた。
/191ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70人が本棚に入れています
本棚に追加