3.前途多難な石の日々

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☆  高校最初の中間考査が終わり、約2週間の部活動停止期間が明けた。  今日から朝と放課後の部活動が解禁になる。 「詩ちゃん、クラブ行こっ」    HRの後、肩を落としながら帰る準備をしていると、夏梨ちゃんが勢いよく抱きついてきた。  懐かしいスキンシップに心がほわほわと温かくなる。  いろいろあっても、こうして仲良しの友達がいてくれるって、すごく幸せなことだ。  私と夏梨ちゃんは、写真部に所属している。  前の学校と同じようにここでも陸上を続けるつもりで見学に行ったけれど、男女合同の練習や合宿があることを知って、入部は断念した。  それならと、夏梨ちゃんが写真部に誘ってくれた。  もちろん写真部にも男の子はいる。と言っても活動は基本的に個々で、部員全員が協力して何か一緒にするのは文化祭くらいらしい。  カメラは未経験だけれど、見学の時に見た夕暮れの写真がとても綺麗だったから、私は思い切って入部を決めた。 「北野さんと江口さん、今日は部長と2年生に同行して運動部の写真撮影お願いできる?」  そう言って、副部長さんが私と夏梨ちゃんにプリントを手渡す。  基本自由な写真部だけれど、春には各クラブの新入部員の集合写真や活動紹介の撮影、秋には体育祭や文化祭の撮影も担当しているらしい。  今日の撮影は、陸上部、サッカー部、ラグビー部、水泳部の順に4つ。  暗くなると撮影ができなくなるから、段取りが重要になる。  まず、副部長さんから渡された予定表の時刻を手分けして各クラブに伝えて、その後に撮影場所のチェック。  2年生の先輩に教えてもらいながら、夏梨ちゃんはサッカー部とラグビー部、私は陸上部と水泳部のマネージャーさんと打ち合わせを済ませた。  写真撮影となれば、今度は部員の立ち位置の確認や誘導。  男の子や先輩の部員さんに移動をお願いするのは緊張したけれど、なんとか仕事をこなせてちょっと嬉しくなった。
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