69人が本棚に入れています
本棚に追加
おやつを食べ終えて首を傾げているブルーをそっとなでてみる。
やわらかくて、温かい。
なでられて心地良かったのか、細い身体がもっと細く、ぐーんと長く伸びた。
「わ、わわ、長くなるなぁ」
猫の背骨って、どうなっているんだろう。
不思議に思いながら見ていると、ブルーの首輪についていた鈴がチリチリンと音を立てて床に落ちた。
あ、紐が切れちゃったんだ。
そっとのぞき込んで見てみたけれど、首輪と鈴を結んでいた紐がすり切れてしまっていて、もう結び直せそうにない。
「ちょっと待っててね」
そう言って、私は急いでキッチンにかけ込んで、お菓子づくりに使う道具入れをひっぱり出した。
中には、道具のほかにラッピングの袋やリボンを入れた箱も入っている。その中から一番細い青色のギンガムチェックのリボンを取り出す。
うん、これなら首輪の色とも喧嘩しない。
私はひとり頷いて、またブルーの元へと戻った。
「おまたせ」
もしかしたら帰っちゃってるかな、と思ったけれど、ブルーは縁側にちょこんと座って待っていてくれた。
大丈夫かな。嫌がったりしないかな。
「ごめんね、じっとしてね」
痛くしないように気をつけながら、そうっと首に手を回して、持ってきたリボンで首輪と鈴を結ぶ。ブルーは私がしていることがわかっているのか、首を上げたままじっと動かない。
その様子がすごく可愛くて、結びながら口元がほころぶ。
飼い主さんが気づいて取り外せるように、ちょっとだけ結び目をゆるくして……。
「よし、できたっ」
私の声を合図に、ブルーがピョンと縁側から飛び降りる。次のジャンプで軽やかに塀にのぼる姿は、まるで忍者だ。
振り向かず去っていく灰色の背中を、私は「また明日ね」と小さく呟いて見送った。
最初のコメントを投稿しよう!