1.はじまりは、黒と青

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 おやつを食べ終えて首を傾げているブルーをそっとなでてみる。  やわらかくて、温かい。  なでられて心地良かったのか、細い身体がもっと細く、ぐーんと長く伸びた。 「わ、わわ、長くなるなぁ」  猫の背骨って、どうなっているんだろう。  不思議に思いながら見ていると、ブルーの首輪についていた鈴がチリチリンと音を立てて床に落ちた。  あ、紐が切れちゃったんだ。  そっとのぞき込んで見てみたけれど、首輪と鈴を結んでいた紐がすり切れてしまっていて、もう結び直せそうにない。 「ちょっと待っててね」    そう言って、私は急いでキッチンにかけ込んで、お菓子づくりに使う道具入れをひっぱり出した。  中には、道具のほかにラッピングの袋やリボンを入れた箱も入っている。その中から一番細い青色のギンガムチェックのリボンを取り出す。  うん、これなら首輪の色とも喧嘩しない。  私はひとり頷いて、またブルーの元へと戻った。 「おまたせ」  もしかしたら帰っちゃってるかな、と思ったけれど、ブルーは縁側にちょこんと座って待っていてくれた。  大丈夫かな。嫌がったりしないかな。 「ごめんね、じっとしてね」  痛くしないように気をつけながら、そうっと首に手を回して、持ってきたリボンで首輪と鈴を結ぶ。ブルーは私がしていることがわかっているのか、首を上げたままじっと動かない。  その様子がすごく可愛くて、結びながら口元がほころぶ。  飼い主さんが気づいて取り外せるように、ちょっとだけ結び目をゆるくして……。 「よし、できたっ」  私の声を合図に、ブルーがピョンと縁側から飛び降りる。次のジャンプで軽やかに塀にのぼる姿は、まるで忍者だ。  振り向かず去っていく灰色の背中を、私は「また明日ね」と小さく呟いて見送った。
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