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てっきり叱られると思っていた私は、実の姉の深い思いに愕然とし、自分を恥じた。
一歩踏み出す勇気があれば、こんなに簡単にわかり合えたことだったのか、と。
言葉を失くしている私の頭を、お姉ちゃんは優しく撫でてくれた。
「理人の束縛は確かに度を越していたわ。姉の私が注意するべきだったのに、言えなかった」
「それは……仕方ないよ、お姉ちゃんは優しいから」
「違うわ、単に臆病なだけ、理人に嫌われたくなかったから……私ね、理人のことが好きなのよ」
今まで微塵も想像しなかった事実に、驚きを隠せなかった。
お姉ちゃんは少し寂しげに、美しく微笑んでいた。
「ずっと片想いしているの、陽波に恋する理人は自分を見ているようで……だから尚更、強く出られなかったのかもしれない。ごめんね」
秘めた想いを吐露したお姉ちゃんは、聖母マリアのように清らかに見えた。
どれほど辛かっただろう。
彼女の気持ちと、それに等しい情を持って接してくれていた理人のことも考えると、胸がしめつけられた。
私に罵声を浴びせられた、理人の悲しげな表情がくっきりと思い出される。
「ううん、そんなのいいよ、私こそ、何もわかってなくて、自分勝手で、ごめんなさい……理人にひどいこと言っちゃった」
「そう思うなら、きちんと向き合ってあげて。理人は何も、あのことがあったからあなたに尽くしてきたわけじゃないわ。うやむやにするよりも、しっかりフッてあげてよ。その方が踏ん切りがつくはずだから」
「うん……」
凛とした瞳に、やっぱりこの人の妹に生まれてよかったと、心から思えた。
「海斗くん、だっけ……彼には感謝しないとね」
「え?」
「だって、彼がこうして打ち解けるきっかけを作ってくれたんだもの」
お姉ちゃんの海斗への好意的な台詞を聞くと、ほっと胸を撫で下ろした。
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