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大した量も飲まないまま夕方になり解散することになった。太田はこれから店を開けるというし、村枝は家に彼女が待っているからまっすぐ帰るという。のんびりとした学生時代の空気は終わり、また二時間かけて家に帰ろうとした所で呼び止められた。
「電車で帰るの?」
「そうだよ」
「なら、一緒に」
篠崎が今どこに住んでいるのかも知らない。ただ同じく電車に乗るなら、離れているのも気まずいと声をかけたのだろう。
案内されるように太田の店から駅へと歩く。赤い夕陽と夕方のざわめき。駅から降りてくる人を避けて進む。
古い駅は来年から改築が始まるらしい。案内を横目に改札を通る。田舎の駅の本数は大してなく、無言のままホームの端で待った。
昼間暑かった日は沈み、ひんやりとした空気が漂い始める。空は深い青に染まり、オレンジ色の電球が篠崎の横顔を映し出す。
あの時も、こんな空だった。
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