青の時間

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 気持ち悪くなんかないと思っていたのに、人に言えなかった。大っぴらに恋人で何が悪いと叫べなかった。確かに子供を作ることは出来ないけれど、好きだという気持ちはきっと同じだろうと思っていた。思っていたのに、言えなかった。  休みの度にどこへ行くのと母親に聞かれ、「友達の家」と答えた。同級生にも親にも、誰にも、同性の恋人がいると言うことができなかった。  俺は地元から離れた大学に進学した。高校三年の時点であいつとの数少ないやり取りすら無くなっていて、あいつが――篠崎がどこに行ったのかわからない。進学したのか地元に就職したのか、それとも。 「仕方なかったんだよ」  独り言。  十年前はまだ、同性愛は普通ではなかった。今では芸能人が同性の恋人を公表していたりもするが、あの時はまだ時代が違った。大人になれば結婚するもので、結婚するということは子供を作るということで、子供を作るということは異性を愛するということだった。
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