青の時間

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 あいつは初恋の相手から同性だったと聞いた。  中学の先輩を好きになった篠崎は、それを伝えることはしなかった。何で言わなかったのかと聞けばやはりあいつは笑って「無理だろ」と言った。  まだ恋人をしていなかったその時は、言えばいいのにと思ったんだ。  言わないと何も伝わらない。口にして言葉にして気持ちを伝えないと、理解はしてもらえない。最初から無理だなんて言っていたら――。そうまるで説教のように言ったから、俺はあいつの恋人になった。 「じゃあ五十嵐、俺の恋人になって。俺は五十嵐が好きだから。恋人になって」  俺の初恋は小学校の同級生だ。当たり前のように女の子。その次に好きになったのは中学生の同級生で、それも女の子。  だから馬鹿にしたあいつらのように、俺だって同性愛を理解していたわけではない。だけども毎日同じ時間を過ごす篠崎のことは個人として、気持ち悪いとは思わなかった。  人に好かれるのは心地良いことで、「いいよ」と答えた俺に篠崎が安心したように笑ったからそれで良かったんだと思った。  ずっと友達をしていたあいつが恋心を抱いていたことに驚きはしたがそれだけだった。もしかしたら優越感すら持っていたのかもしれない。  気持ち悪くはなかった。嫌でもなかった。  だけどあいつは、俺にキス以上を求めてはこなかった。いつもきれいに整えられていたあの部屋のベッドで抱き合ったことは一度もない。
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