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「菜の花の花言葉は快活、明るさ。その花が枯れて、魂の象徴である蝶々が止まる。まるで死に行く者を連れていく天の使者みたいだ」
「え?」
いつもと違う、練の真剣な口調。それに違和感を覚え、私は思わず聞き返した。
「……あ、ううん。何でも無いよ。行こっか」
慌てた様子で首を振り、先を歩き出す練。少々早歩き気味だ。
「あ、待って」
私も追いかける。
練の背中を見ながら、私は不安にかられた。
小さな違和感。
まるで、練がどこか遠くに行ってしまうかのような。
どうしようも無いほど手の届かない場所まで、蝶々のように羽ばたいていくような。
「追い付いた。待って練」
「あ、ごめんね叶ちゃん。早く歩きすぎちゃった」
「あ。……うん」
勢いで手を握ってしまい、衝撃で飛んでいってしまった。
相変わらず、桜はひらひらと花びらを散らしている。
私の小さな心の異物は、そのまま埋もれていった。
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