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「あ……」
ふと、蝶々が飛んでいた。
桜が舞う中を避けながら、白い羽をひらひらと動かしている。薄桃色とのコントラストが目を引き、ついつい目で追ってしまう。
「あ、ちょうちょ」
練も見つけたようだ。立ち止まり、蝶々の行方を眺めている。
ひらひらふらふらと飛ぶ蝶々は、やがて目的地を見つけたようで、細い足を付けて止まり、羽を閉じた。
菜の花だった。茎が緑で黄色く可愛らしい花を咲かすそれは、しかし既に枯れてしまったようで、茎も花もほとんど色を失い、立っているのもやっとの状態だ。
まだ春真っ盛りで、現に桜は咲き誇り、陽気も暖かい。寿命を迎えるにはまだ早いだろうに、生きる役目を終え、朽ちるだけだった。
私は物悲しさを感じた。
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