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 覚えているのはどこかに楓君に抱っこされて連れて行かれた事と、楓君にネックガードを外して自分のモノになってと言われて――――俺は何て答えたんだろうか? ちゃんと答えられたんだろうか?  キミの事が好きだとちゃんと伝えられただろうか――――? そして俺たちは――――――?  恐る恐る項に触れてみるとでこぼことした噛み跡があり、自然と口角が上がる。  この八年間、俺はいつも生きているようで死んでるような毎日を送っていた。  『運命』『魂の番』なんてロマンティックな事を言うつもりはないが、楓君は俺の全てだった。  何であの時簡単にこの手を離してしまえたのか――――。  俺の横で眠る楓君の綺麗な寝顔。スースーと小さく聞こえる寝息すらも愛おしい。  長い睫毛、整った顔立ち、薄っすらと色ずく艶やかな唇。  ふわふわの柔らかな髪はあの頃のまま。  楓君を起こしてしまわないようにそっと頭を撫でる。  俺は楓君に……抱かれて番になったんだなぁ……。  実感していくにつれじわりじわりと胸の中に広がる多幸感が今までの色んな想いを塗り変えていく。 「楓君、好きだよ。もう二度とこの手を離さないから……楓君も俺の事を……離さない……で……」  再び訪れた眠気に抗う事はせず、そのまま楓君の温もりを近くに感じながらゆっくりと眠りに落ちて行った。
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