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 あれから何度かデートを重ねたが、楓君が十四歳という事もあって結婚を前提としてるとはいえ俺たちの交際はいたって清いものだった。  今日は楓君のたっての願いで動物園に来ている。  終始笑顔の楓君に比べて俺は、考えても仕方のない事なのにこんな場所には親子連れや恋人同士が仲良く笑い合ってる姿ばかりが目に入り、どこか落ち着かない。  この人たちには俺たちふたりの事がどんな風に映るんだろうか?  兄弟? 親子? 年齢的に見えなくもないが容姿があまりにも違いすぎるからそれはないか。  だとしても恋人同士や婚約者だなんて誰も思わないだろうな――。  じゃあ俺たちは――――何?  そんな事を考えていると楓君の小さな手がきゅっと俺の手を握った。  ドキリと跳ねる心臓。楓君と一緒に居る事には流石に少しは慣れてきたが、こういう事には全く慣れる気配もなく、どんどん悪化しているようにも思えた。  だというのに楓君は無邪気な笑顔で「あっち行ってみましょう」と熊の檻の方を指さし、引っ張るようにして歩き出した。  熊の檻の前に着くと立ち止まり、手は繋いだままでじっと熊を見つめる。  キミの視線を独り占めする熊が羨ましい……。 「楓君、熊は……好きかい……?」  自分でも唐突な質問だったと思う。だけど、訊かずにはいられなかった。  慣れてきたとはいえやっぱりこんな天使みたいな子が熊みたいな俺とゆくゆくは結婚するだなんて……。楓君は何度も俺の事を好きだと言ってくれたけど、やっぱりそう簡単には信じる事ができない。  だから訊いてしまうんだ。それも直接俺の事好き? ではなく熊は好き? だなんて……。  楓君は俺の質問にきょとんとした顔をしたがすぐに破顔した。 「熊ですか? 勿論好きですよ。大きくて抱きしめると温かそうですよね。えいっ」  そう言うといきなり抱き着かれた。身長の関係で腰の部分に楓君の顔がくる。 楓君は熊=俺の事だと気づいているのだろうか? 気づいていて好きだと言ってくれたのだろうか?  熊を好きだと言われて嬉しいのに不安はなくならない。  楓君にぐりぐりと頭を擦り付けられるが、場所が場所なだけにちょっと困ってしまった。  このままでは兆してしまう……。  俺は慌てて楓君を自分から引きはがしたが、楓君はそれが不満だったようで可愛い口をむぅと尖らしてみせた。  そしてすぐにはにかんだように笑う。  楓君は時々こういう大胆な行動をとる。  大きな動物に懐くような健康的な甘えだと思うのに、こういう触れ合いに慣れていない俺は毎回どぎまきとしてしまう。今までお付き合いした事もない俺には刺激が強すぎるのだ。  それなのに楓君はいつもどこかしら俺の身体に触れてきて、俺の部屋だとか人の目がない場所だともっと大胆になる。  Ωにとって急所となる項や腰や太ももに触れてくるのだ。相手は十四歳だ。こんな触れ合いに性的な意味なんてあるはずがないのに、俺の身体は反応してしまって中心は熱を集め始める。  なんて浅ましい。  子ども相手にいやらしく反応してしまう自分の身体が恥ずかしくて、だけどもっと触れて欲しいと自分の中のΩが叫ぶんだ。  その日は最後まで楓君の顔を見る事ができなかった。
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