マッチャ、ごめんな。

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失うものがないことだ。 だからどんな危険な実験も恐れずにチャレンジできる。 それでも手が震える時はかつて妻と旅した世界の国々で見た絶景写真のアルバムを開く。妻は元気になったらまだ行ってなかった世界の絶景を見に行こうねって何度もつぶやいた。最後の言葉もそれだった。 ワンワンワン! ちぎれるほどに尾をふって マッチャがまた何かを見つけたようだ。 地面のあたりに鼻先をつけて何かを嗅いでいる。 近づいてみるとそれは小さな花だった。 妻の好きな花が凛と一輪咲いている。何度か種を蒔いていたがいつも芽吹かなかったのに、一輪だけ。 僕は一人だけの地球でこみあげる嬉しさに泣いた。 これを大切に増やそう。もっともっと花を緑を増やして、いつか、あの絶景を元通りにしよう。 失うものはないんだ。
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