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ウサギとかめが、かけっこをした結果、
大方の予想を裏切り、足の遅いかめが勝利した。
納得がいかないウサギは、かめに再度勝負を挑んだ。
次こそ、かめが絶対に勝てない種目で。
「腹筋で勝負だ!」
あの固い甲羅がある限り、腹筋なんて出来るはずがない。
しかし、かめは、ウサギの提案にひるむ様子も見せなかった。
「やれやれ。仕方のないやつだ。
なら、こちらも、本気を出させてもらうぜ?」
かめはそう言うと、おもむろに甲羅を脱ぎ捨てた。
どさりと音をたてて、落ちる甲羅。
地面に舞い上がる砂ぼこりが、その甲羅の重さを物語っていた。
ウサギは思わず、息をのんだ。
あの固い甲羅からは想像できないほど、
かめの肉体は隆々と仕上がっていたのだ。
黒く艶々と輝く肌に、脈打つ血管。
地面にそそり立つその姿は、まさに王者の風格だった。
「待たせたな。さぁ、始めようか」
かめがゆっくりと振り返った時には、
ウサギはすでに男としてのプライドを喪失し、逃げてしまった後だった。
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