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「ダメだ」
「あれ、マネージャー、どうしたんですか。デスクに戻ったのにまたこっちに来て」
と、頭上から声が聞こえて上を見上げると背後に柊がいた。
「二人で飲むのはダメだ」
「何でですか?だって琴葉ちゃん全然俺に心開いてくれないんですよ」
「開いてますって!」
わかっている。涼に下心はないし、仕事上仲良くなるために誘ってくれていることも。
「じゃあ俺も行く」
「え…」
「藍沢は酒が弱いんだ。何かあったら大変だろ」
「…まぁそうか。じゃ、マネージャーに奢ってもらおうか!」
涼は誰に対しても対等に、そして壁を感じさせない接し方をする。それは柊に対しても同じだ。
「え、じゃあ今週末涼さんだけじゃなくてマネージャーも一緒に…?」
「なんだ、そんな嫌そうな顔するなよ」
「嫌じゃ…ないですが」
「まぁ上司と飲み会って普通嫌だよね。俺は全然気にしないけど」
「でしょうね…」
「あ、電話だ」
涼の会社用携帯が鳴って、席を離れた。
柊が飲み会に来るならば、琴葉としては涼と二人の方がまだマシだった。
涼がフロアを抜けて視界から消えると
「今日の夜、取りに来いよ」
「…絶対ですか」
「絶対だ」
柊が去り際にそう言った。引きつる顔をなんとかほぐそうとするが無理だった。琴葉は鬱屈した気分のまま午後の仕事にとりかかった。
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