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琴葉を立たせるとニヤリ、不敵な笑みを浮かべる柊が今度は鏡の方を向くように指示する。
鏡は昔から好きではなかった。
自分の中身に自信を持つことはできても、外見で自信を持つことはできなかったからだ。咄嗟に目を閉じていたが、柊のちゃんと見ろ、という言葉にゆっくりと瞼を開ける。
そこには…―。
「…あ、」
「ほら。いい女だろ」
琴葉と柊は鏡越しに目が合っていた。それだけではない。上気した頬に、メイクのせいで普段よりもぷっくりした唇、妖艶な目元、どれも“女性らしさ”があった。
先ほどカウンターで見た姿とは少しだけ違う。その“少し”は柊が琴葉の背後にぴったりくっついているせいで女の顔をしていることだ。
柊は、ふっと軽く笑うと琴葉の後頭部にキスをする。
「ひぃ…っ」
「情けない声出すなよ。綺麗だよ、琴葉は」
すると、柊は琴葉の体に腕を回し、首筋を撫でる。撫でられる自分の姿を鏡越しで見ているというドラマのようなシチュエーションに眩暈がする。
立っていられないほどに胸が圧迫される。少しでも撫でられるだけで体が大きく跳ねた。
そんな琴葉の様子にクツクツと喉を鳴らす柊に気絶しそうになった。
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