隣の純喫茶

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私は広い席に座った 一人で座るのには申し訳ないが 煙草は吸わないから男たちと 離れたところがよくってね メニューをみたらランチと書かれていた 他はケーキセットのみだった すみません、熱い珈琲を、と言ったら はあい、と元気な声が聞こえた さらに気持ち良くなった 左隣には50前後の女が二人 なにやら話が聞こえてきたんだが 片方の女に彼氏がいるみたいだ しーっと言っているからには 訳ありなんだろうか 右隣には近所の老女が一人 常に落ち着きがなさそうだ 私の方をじっと見つめては外を見ていた 私は携帯を触りながらそれを感じていた 熱い珈琲が運ばれてきた 携帯と置いたと同時に "なにしてるの?" と老女が話しかけてきた 私は声の方に顔を向けた 笑顔で増えたであろう目の皺と 暖かい眼差しを持った品の良い老女がいた こんな人だったのかと思った さっきまでは廃れたTシャツと思っていたが 大きめの上品なTシャツを着ていたのか 我ながら想像で作り上げるのは ほどほどにしないといけないな すまないと心の中で謝った 遅れて私はこたえた
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