隣の純喫茶

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"文字を打っていました" "へ?文字を?" 老女は驚いていた そらそうだろう、 文字を必死に打つなんて驚きだ "ゲームをしているのかと思ったわ" うふふと言わんばかりに笑った 笑い方も品が良かったんだ こういう女性は魅力的だ 何歳になっても変わらない 若い頃を想像してみたけど とびっきりの美人だった 喫茶店でばったり会うなんて 運命じゃないかと思った まあ他の人から見たら 若者と老女なんだろうな "ごめんね、声をかけて あまりに早くなにかを打っていたから 驚いてしまってね" どうやら携帯を使いこなせないらしい 通知の音がしてもなにから来ているのか わからないしどうしたら覚えられるのかも わからないんだと言っていた "歳のせいにしてはダメよねえ" "私もよくあるのでお気持ち分かりますよ" と言ったものの 恐らく私が急に編み物をしろと言われても やり方が分からないのと同じだ 何回聞いても糸をかけ間違えたり 引っ張りすぎて解けたりするもんだ そら難しいよなあ、と心底思った "ごめんなさいね、続けて" と言われたが私は話したくてたまらなかった
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