隣の純喫茶

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"お話しできて嬉しいです よくこちらに来られるんですか?" あら、と言ったような表情だったが すぐにまた柔らかく笑って "ありがとう、たまにね、来てるの" お顔覚えておきますね、と言ってくれた また会えるといいわね、とも 私はこの人に会いに、ここに、来るしかない という気持ちに駆られた どれぐらいのペースで通えばいいだろう 日曜のお昼が多いのだろうか 平日に来てもまた会えるだろうか 彼女を見ながらそんなことを考えた 私はなんて愚かなんだろう 初めて会った人にこんなにも惹かれるなんて ましてや、老女だと思っていたはずの女性 が、こんなにも美しく見えている今 どうにかなりそうだった というよりどうかしていた そのまま私たちは話をした 私が喋りすぎたなと一口飲んで、 珈琲が冷めてきたと感じた頃 "それじゃあね" "楽しい時間をありがとうございました" "こちらこそありがとう" そう言って小さくおじぎをして 女性は杖をつきゆっくりと歩いて行った 私は誤解していた
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