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月明かりに映し出された茂森の顔は、いつもの無邪気な様子じゃない!?
「あのな、茂森っ」
離れようと腕に力を込めたなら強く引き寄せられた。
───俺の知らない茂森だ。
可愛らしい顔つきじゃなくて男の顔つきだった。
「……ふざけんな」
「ふざけてなんかないよ、真剣だよ。あきちゃんが誰かを好きになる度に、意地でも邪魔をしたかった。早く気づけよ、ばーかって。いつも思ってた」
ば、馬鹿?
……!
あー!
今頃になって気がついた!
自分の淡い恋心が一度も実らなかった原因が茂森にあっただなんて。
ウザイぐらいに俺の周りをうろちょろしていたのは。
毎日「あきちゃん、待ってよ!」って、くっついていたのは……。
「この腕を離せ」
「嫌だ」
独占欲からだったのか。
「あきちゃんのことを諦めようと内緒で、他の女の子と付き合ってみたんだけどさ」
なに?
内緒で?
女の子と付き合っていたのか?
……ショックだ。
茂森に彼女がいた事実ではなく、俺は誰とも付き合った試しがない。
学校やバイト、家事、弟の面倒までみている毎日だから、そんな余裕がないのだ。
ますます腹が立ってきた。
この状況にも腹が立ってきた。
離せ茂森、と鋭い視線を投げつける。
「チャンスは何度かあったのに出来なかった。あきちゃんの顔が浮かんで勃たないんだ、俺、重症だよ。あきちゃんとエッチがしたい」
重症でもなんでもいい。
あれ、よくないかっ。
エッ……?!それは無理だろう。他の人に目撃される前に、だな。離してくれ。
「その気持ちには応えられないよ、悪いけど。エッチは彼女としな」
背中に回されていた腕が不意に緩む。ホッとしたのも束の間。離れた手が俺の両手首を掴んだ。茂森の顔が近づく。
……どアップだ。
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