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※※廉也Side※※
「さっきバイトに来てた子は誰?」
「あの元気で可愛いらしい子ですよね、たしか──」
「違うよ、もう1人の方だよ」
初対面なのに一瞬にして目が奪われた。公私混同はしないのに。第一印象は気が強そうにも見えた、しっかりしてそうだ。
「彼の名前を教えてよ、知りたいな」
「か、神城さん――あの、その……」
俯く女性スタッフとの距離を縮めた。
「詳しく尋ねると、なにか不都合でもあるとか?」
「え……と。困ります、プライベートは話せません」
正直、この手は使いたくなかった。本来の俺はしない。好きでもない相手には絶対にしない。
「教えてくれないかな、彼のこと」
「────か、神城さんっ……」
真っ赤に頬を染めた女性スタッフの耳元へ囁いた。観念したのか、ポツリポツリと語りだす。
彼の名前は『木城晶人』、高校二年生。敏腕雑誌編集者、木城彼方さんの甥っ子だ。
……だから、なかなか口を割らなかったのか。
木城さんの甥っ子に手を出したとなれば、万が一でも彼を傷つけでもしたのなら―――敏腕雑誌編集者の裏の顔は冷酷非情だと聞く。
「木城くんは、その……。深入りはしない方がいいかと思います。木城さんが黙っていないでしょうから」
「わかってる、深入りはしない。敵に回すと仕事に支障が出そうだ」
穏やかに微笑めば女性スタッフの安堵した表情。だけどそれは友達で終わるか、それ以上の関係に進展するのかなんて、直接接触をしてみなければ分からないだろう?
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