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けれど、俺はもう逃げないと決めたのだ、この気持ちから―――……。
「木城くん?」
「廉也さん、あのっ……」
心配をした廉也さんが俺の顔を覗き込む。うわ、ドアップだ。
「車の中で話しても、いいですか?」
「うん、そうだね?」
慌てて視線を逸らした。だってあんな整った顔を直視できる人がもしいるならば、ぜひお会いしたいよ。
赤面をする俺の様子を見て、廉也さんはなぜだか機嫌をよくしてた。
さーて、と。なにから話そう?
今さらかよ?
駅のパーキングエリアに停めてある、廉也さんの車に乗り込んだのはいいが...。
あ、そうだ、試合!
このあとは、茂森の試合観戦に行かなくては。一世一代の告白だが、本音はムードある場所でしたかったのだが。静かな車内に、たまりかねた廉也さんが言葉を発する。
「このままパーキングエリアにいてもね。場所を変えようか?」
「いえ、このままで」
「このままでいいの?」
「はい」
もう言おう!意を決して顔を上げて、不思議そうな顔つきの廉也さんと見合わせた。返事が大変遅くなったけど。やっと俺は、あなたが好きだと気がついたんだ。憧れではなく、本当の『好き』に。
「俺......」
切羽詰まっる俺を見て、『落ちついて』、と廉也さんは優しく微笑む。なんとかリラックスが出来た。大事な告白だ、ちゃんと心を込めて伝えよう。
「廉也さん、返事が遅くなってごめんなさい。俺は廉也さんが好きです」
......好き、の意味が伝わったのかだろうか。
「1人の男性としてあなたが好きです。俺は年下だし、意地っ張りだし、可愛くないけども。恋愛なんかした経験がなっ......い.....けどっ」
運転席から身を乗り出した廉也さんにいきなり抱き竦められた。
どきん、どきん。
鼓動が速い。
ドキドキしているのは、俺だけではない。廉也さんも────?
「ほんと?ありがとう、木城くん!俺も君が好きだ、大好きだ。ずっと言ってるけどね」
大人なのに。廉也さんが向けた笑顔は、嬉しそうな、照れたような、無邪気な弟達とよく似ていたんだ。
「廉......っ也さっん」
不意に俺の唇にふわりとあたたな感触が。見つめ合う目と目。ああ、そうか。キスしてんだ。キスを。
「俺を選んでくれて、ありがとう」
とくん、とくん。甘い疼き、心臓の音が速い。このままずっと、この胸に抱かれていたい。至福のひとときだった―――。
が、そうゆっくりもしていられないのが現状だ。
「廉っ……?……はっ、…んっんっ」
フレンチキスから、強引なキスへと変わる。体から力が抜けていく、息が……できないよ。
「ごめんね、嬉しくて。つい……。木城くん?」
「はっ、い」
心配そうに、息のあがった俺を覗きこんでいた。深呼吸をして息を整える。
「廉也さん、あの。実は……」
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