95人が本棚に入れています
本棚に追加
けどさ。だけどさー。
試合観戦中は後ろの席で立っている廉也さんが気になる。サングラスをかけていても、あの一般人とは違うオーラに、何人かの人が気がつきやしないかとハラハラしっぱなしだった。ハーフタイムが怖いっ。
「あっちさ、なんか人がすごくない?」
「ほんとですね、甲坂先輩!女子が多いです」
「あは、あはは。ほんと、それな!」
あーあ。廉也さんの周りは、女の子ばっかりだ!それをぼんやり眺めている俺は、複雑な心境だった。10分間のハーフタイムが終わり、後半戦がスタートする。キックオフは、相手校からだ。
「うちが2点リードしてるからな~。逃げ切るのもありだな」
「茂森はまだシュートを決めてないから、後半は攻め込むかも」
「尚にぃのかっこいいとこ、見てみたいね!」
「あ!茂森が前に出たぞ?!」
一際歓声が大きくなる。俺たち3人はフィールドに釘付けとなった。
茂森とDF入江選手のセットプレーでシュートの好機を狙う。
「うちのDF、入江のドリブルすげーな!突破力がハンパない!」
「茂森と息があってんだ?」
「そうだろな。ここまで来るには、並大抵の練習量じゃない。お互いを信頼し合ってる」
DFの選手が相手を引きつけて、上手くスペースを作る。マイナス方向にパスをした。
『シュート!!!』
うわ、すげー!
茂森がシュートを決めた!
初ゴールだ!
「兄ちゃん、やったね!」
「うん、かっこいい!」
「やるじゃん、茂森!さすが、未来のエースストライカーだ!」
仲間と嬉しさで抱き合う茂森が、一際輝いてみえた。
試合結果は3ー0で、うちの高校が勝利した。まずは予選1回目は無事に突破。次の試合は11月10日だ。もし応援に行けるなら、次も駆けつけたい。茂森が許してくれるなら─────。
最初のコメントを投稿しよう!