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午後7時。バイトが終わり、給料明細書を受け取った。なんとなしに確認をする。あれ?先月よりも2万円ほど多い。見間違えたのか、と何度も何度も確認をしたがやはり多かった。
「えぇと。これは、なにかの間違いじゃ?先月も、同じ労働時間でしたよね?」
「木城くん、経理担当者に確認をしてくるわね!」
しばらく女性スタッフを待つ。
「――ごめんね、木城くん。お待たせ。実は…」
「そう、なんですか?」
その内容を聞いていると、無性に腹が立つ。
茂森のヤツ―――!!
給料明細を握りしめて全速力で向かうのは茂森の家だ。アイツ、なんでこんなことをしたんだ?茂森の家のインターホンを鳴らす。最初に出てきたのはおばさんだ。俺の切羽詰まった顔でオロオロして。そんで茂森が悠長に、鼻歌まじりながら階段を降りてきた。
「お前!」
「晶人くんが急ぎの用みたいよ。あんた、またなにかしたの?!」
「あきちゃん?バイトお疲れさまっ。……怖いなぁ。俺の部屋で話そうか。ううん、なにもしてないよ。お袋は心配しないで」
心配をするおばさんを残して、久しぶりに茂森の部屋へと入った。
ドアが閉まる。
「俺が言いたいこと、わかるよな?」
「あきちゃん、落ちついて」
落ちついていられるか!
「俺に黙って……こんなことっ」
なんでしたんだよ?茂森は、バツが悪そうにして首を搔いた。
「だってあきちゃん、俺からのプレゼントは素直に受け取らないじゃん。ほとんど、お小遣いもないんだろ。だから……」
「だからって。このお金は、もらえないよ。明日にでも引き出して、返す。サッカー用品や、茂森の好きなモノを買うべきだよ。俺は、茂森と早く仲直りがしたいんだ」
俺の願いは前みたいな、幼なじみの関係に戻りたいんだ。
「わかった、あきちゃん」
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