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わかった、ってなにが?落ち着いている茂森が大人っぽく映る。呼吸を整えよう。なんか俺1人だけが、突っ走てて…。冷静になると恥ずかしい。
「ごめん、茂森。落ち着くよ」
「俺の方こそ、余計なお世話だったか。あきちゃん、俺ね、サッカーボールとスパイクシューズがほしいんだ。その余分なバイト代から、あきちゃんからプレゼントしてくれれば…」
「おいおい。それは変じゃない?」
「変じゃないよ?……あきちゃんからのプレゼントって言うのが、醍醐味あるじゃん?」
うーん、そうなのか?
茂森がニコニコ笑って伝えるぐらいなんだから、たぶん、そうなのだろう。
イマイチ、腑に落ちない。
が、茂森が納得するなら、と頷づいた。
「わかった、そうする。余ったバイト代からプレゼントをするよ。今後は、二度とこういうことはするなよ?」
「うん」
「……お疲れのとこ、悪かった。おばさんにもきちんと謝っておくよ。おやすみ、茂森。またな」
よし、話しはこれで。と背中を向けた俺の腕を茂森が取る。
「待って、あきちゃん」
「な、なんだよ」
ヤバ。真剣な表情の茂森はある意味、危険だ。
「最後のお願いだ。1回だけ、あきちゃんとデートしたい。そんで、諦めるから」
デートか。俺1人では決められない。困った俺を見て、茂森はあはは、と笑いだす。
「あきちゃん、まじ面白いな~。本気にとるなよ。冗談だよ、冗談! 」
「冗談?」
「うん。……俺もそろそろ寝るか。明日も朝練なんだ!おやすみ、あきちゃん。来月の試合の応援よろしくね」
「ああ、おやすみ。わかった、必ず応援に行くよ」
心なしか、茂森の声が暗い。俺とデートしたい、と言ったのはおそらく本心なのだろう。俺もバイバイと手を振り、おばさんに挨拶をして茂森の家を出た。
いつか―――。
俺と茂森の関係が、はやく元に戻る日を祈ろう。これからはキツイ言葉もかけず、優しく接しようと決めた。
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