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来月は、サッカーの試合の応援にかけつけて、そのあとは例のブライダルフェアの打ち合わせや、レッスンなどなど予定が盛りだくさんだった。事務所の副社長は廉也さんの相手役を引き受けた俺に、手放しで喜んでいた。
―――付き合っているのは内緒だけど。
「いやぁ、うちの事務所も一気に有名か~!ありがとう、木城くん!」
「……はぁ」
それよりも、バイト代!弾んでくれるんだろな?
「大丈夫だよ、ばっちり任せて!」
ウィンクされてもなぁ……。
「お疲れさまでした、おさきに失礼します」
「またね、木城くん。お疲れさまー!」
かるーいノリの副社長に別れを告げて、バイト先をあとにした。
「木城くん、お疲れさま」
「廉也さん、お疲れさまです」
廉也さんは別のスタジオで撮影があり、早めに切り上げた俺と会う約束をしていたんだ。さすがに、夜は冷え込む。
「寒いね、どこかで温かいものでも飲む?」
「そ、ですね」
俺の頭を撫で、それから廉也さんの腕の中へ。うわ、まだ慣れないや……。
「毎日、返したくないって思うよ」
「廉也さん……」
誰かが見てるかもしれないから、1度だけキスをした。
「カフェでも行こか」
「人だかりの中、大丈夫ですか?」
「……たまにはフツーにデートしたい」
手を繋ぎ歩き出す。心はポカポカ、繋ぐ手もポカポカだ。
「売れなかった時代は、売れたい願望が強くて。売れっ子になったらなったで、悩みはつきものだ」
俺の顔を見て、苦笑混じりにそう告げる。
「だからさ。木城くんが高校を卒業したら、俺と住まない?」
「えっ」
それって、同棲―――?!
いきなりの提案で、心臓がドキドキする。廉也さんの瞳は真剣そのものだ。
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