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本気だよ。
今日。
はじめてバイトを休んだ。
※※※※※
その日は朝から気分が下降気味。おまけに寝不足が重なり、目の下に茶色いクマが出来ている。
最悪のコンディションだ。それもこれもぜんぶ茂森のせいだ、あんにゃろう!
まだ唇に生々しい感触が残っている。どうしてくれる?
1日中気分が悪くて、超不機嫌なまま学校生活を過ごした。友人達が気をつかうほどだ。
……茂森。
その日のうちに謝りにくるのかと思えばまったく姿を現さない。あれだけ『あきちゃん、あきちゃん』、と毎日うざかったのに一向に姿を現さなかった。その方が静かで清々するよ、もう二度と顔を見せるな。
サッカーの練習後はスタジオのバイトに入るみたいだから、俺はバイトを休もう。給料が減るけど、まぁいいや。
後日、スタッフの人から聞くことになるのだが、茂森は部活との兼ね合いで多くて週2回、最低週1回しかバイトに入らないそうだ。
ふ~ん。
部活をメインにするのなら、やめればいいじゃん。
俺は生活がかっているが、茂森はバイトをするほどお金に困っているようには見 えない。
なにか欲しいものでもあるの?
お小遣いじゃ足りないのかな。
茂森がバイトを始めた本当の理由をかなりあとになって知ることになる。アイツはアイツなりにきちんと考えを持っていたようだ。
「すみませ~ん、木城先輩いますか?」
机の上で頬杖をついていた手がずれた。こ、この明るい声は……!
「木城~。一年の子が呼んでるよ」
「………」
まったく反応を示さない俺に友人の1人が『お前の幼なじみだろ?』、と大声を出す。
わかってる、聞こえてる。
───だから……静かにしてよ。
重い腰を上げた。
ここ2、3日は茂森に会わずにすんだのにやっぱりアイツは会いに来た、姿を現した。いまさら詫びでも入れるつもりか?
「なんだよ、茂森」
俺の声は超不機嫌極まりない、目元が細まる。
「あきちゃん、久しぶり!ここじゃなくて、あっちの渡り廊下の方へ行こうよ」
茂森は気にしてる風でもなく、普段通りの無邪気な笑顔を浮かべ俺を誘う。なんだ、謝りにきたのではなかったのか。
ついでに、「あきちゃんが好き」と言う告白も取り消してくれないかな?
なんて。
しぶしぶ茂森の言う通りに、人集りの少ない渡り廊下へと歩く。
仕方なく、だよ。
仕方なくなんだからな。
渡り廊下についた途端、俺の前に差し出したのは一枚のCDだ。
「それ、昨日発売の……」
「直接あきちゃんに渡したかったんだ」
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