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「大学は、俺の住むマンションから通えばいい。君の学費は出すよ。生活費もね」
「え、と。その」
大事なことは、自分1人では決められない。俺が家を出て、廉也さんの住むマンションで暮らすとなると、尚さらだ。
「親父やお袋、あと彼方さんの問題があります」
「あー、そうだね……」
彼方さんの名前が出ると廉也さんの声が低い。……お互い、苦手なんだな~。
「問題は一つずつ、きちんと解決していこう。同棲は、君が嫌ではなければ前向きに考えてみて」
「はい」
嫌なわけなんかない。むしろ……嬉しい。いろいろ想像してしまった!かぁッと頬があつくなる。
「木城くん…?」
「あ、いや。そのぅ。ゆっくりでお願いします」
廉也さん、ぷっと吹き出した。俺は真剣なのに。
「うん、そうだね。ゆっくりね。我慢の限界がきたら、ごめん」
我慢の限界とは?聞くまでもない。
「少しだけ、次の段階に進もうか?」
え?視界が暗くなる。ここは外だ、誰かに見られるかもしれないのに。廉也さんの唇が近く。はじめは軽く、力強く唇を押し付ける。
「俺……」
潤む瞳の俺の顎を掬いあげた。
「口、開けて。ん、そうだ。……木城くん、素直で可愛いな」
「はっ…あっ………ふぅっ」
自分の口の中が、変だ。廉也さんの舌が俺のと絡み合う。頭が痺れ、ぼや~とする。息が……できない。濃厚な、大人のキスだ。気持ちいい。廉也さんが相手だからかな。ぜんぜん、嫌じゃない。
もっと……。
「き、木城くん?」
「は……いっ」
くたりと力が抜けた。
「大丈夫?ごめん、つい……」
「だ、大丈夫ですっ」
心配をした廉也さんが、真っ赤な顔の俺の顔を覗きこむ。もっと、と感じたのは黙っておこう。けれど、廉也さんは気がついていたみたいだ。
「ここじゃあね。時間もないし。続きは、また今度」
―――今後?
「いや、その。木城くんが高校を卒業するまで我慢する。キス以上は手を出さない」
そのセリフを聞いて、ほっとしたような、残念なような。複雑な心境だった。
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