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※※※※※※
毎朝の登校時間。家は隣同士なのに、距離が遠い。いつもなら、喧嘩しながらでも茂森は傍にいたのに―――。
ふぅっと息をつく。そうだ、前を向いて歩こう。俺がいつまでもウジウジ悩んでいては、良いことも回ってこない。
「あきちゃん!」
え?
「あきちゃんてば!暗い顔してどうしたんだよ」
「しげ、茂森!」
「大会が終わるまで朝練があったりするんだけどさ。たまには、一緒に学校行こ」
「……うんっ」
フツーに話しかけてくれた。ただただ、それが嬉しくて。俺から笑顔で挨拶をした。
「おはよ、茂森。プレゼントは来週にでも渡すよ」
「わぁ、ほんと?ありがとう、あきちゃん」
と言っても、元は茂森のお金だけどな。足が出たぶんは、俺が出そう。
まだぎこちない雰囲気だけど。久しぶりに茂森と一緒に登校したんだ。つかず離れずの距離をとる。いつの間にか校門の前にきていた。
「お、木城と茂森じゃん。おはよう!」
「お前ら、やーっと元の関係に戻ったか。おはよ」
「先輩たち、おはようございます!じゃあね、あきちゃん。俺も友だちのところに行ってくる!」
「あ、うん!またな」
茂森はクラスメイトのところへ走りだす。俺は元の関係に戻りつつの感触をなんとなく感じていた。
時間はかかるが、きっと大丈夫。だって去り際に…。
ぽそっと。
『神城さんと仲良くしなよ?試合終わったら、モデルの女の子紹介して!』……だって。
茂森も少しずつだが前に進もうとしているんだ。俺も負けていられないなぁ。優しい茂森には感謝しよう。あいつの良さをいまさらながらに気がついた。遅かったが、これからは俺からもきちんと挨拶をして。そんで、友だちとして、幼なじみとしてこの関係を大事にしたい――。
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