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「ちょ、晶人!いまの話しはどういうことだ?」
「晶にぃ、本気なの?」
「あ、うん。まだ決めかねているけれど」
わわ。想像した以上の反応だった!廉也さんに相談をせず、ひとりで突っ走てしまったか。
お袋だけ、なにも発さない。
「えーと、だな。晶人と神城さんが付き合いはじめて…。お前が高校を卒業したら、この家を出るのか」
「うん、その予定だった。……けどお袋の妊娠が判明しただろ。来年は俺が受験生だしな。勉強をがんばりたいんだ」
塾に通ってないからな。余分な出費は避けたい……、のが本音だった。
「真人さん、この子……堕ろしましょう」
えっ。全員が驚いた。
「いまならまだ間に合うわ。みんなに、迷惑……かけられ…なっ……」
「早樹ちゃん……」
そこで、ポロポロと涙を零したお袋の声が震えていた。すべては
、くそ親父がっ。……けれど、授かった尊い命だ。俺たちの家族だ。無事に産んであげてほしい。
「……あんまり。ううん、家族の問題には……」
どうしよ。こんな時に、廉也さんの顔が浮かぶなんて。利用してるとしか思えない。サイテーな俺。
その時。ジーンズのポケットにしまっていたスマホが震える。……廉也さんだ。出るか、出ないか。
―――結局、出れなかった。家族の問題に巻き込みたくなかったんだ。
「親父、お袋の精神状態がおちついたら、あらためて家族会議をしようよ。俺もどうしたらいいのか、考えてみる」
「そ、そうだよ!お袋の体調が1番優先だよ。体をやすめて。お腹の赤ちゃんにも影響するからさ」
「晶人、有紀人、ごめんな」
有紀人の言うとおりだ。お袋の体が1番大事だ。この日の家族会議は、3日後に延ばしたんだ。
風呂から上がり、ベッドの上に寝転んだ。ぼんやり天井を見ていた。……また、スマホが鳴る。そういや、返信してなかったなぁ。
「……はい、もしもし」
「木城くん、こんばんは。勉強中ならLINEにするよ」
「いえ、そろそろ寝るところです。さっきは、風呂に入ってました。すぐに出れなくて、ごめんなさい」
あーう、ダメだ。声が沈んでしまう。
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