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「なんだって?圭人、その話しは本当か?」
―――1回目の家族会議が中途半端に終わった次の日の夜。久しぶりにケーキを持って、我が家にやって来た仕事帰りの彼方さんが、リビングでゲームをする圭人に尋ねる。
「うん!お父さんが、春人は来年お兄ちゃんになるっていってたよ」
「……ったく。兄さんは……」
「彼方さん、いらっしゃい。コーヒーでもいれようか」
「晶人、バイトは?コーヒー、いただくよ、ありがとう。圭人、はい、ケーキどうぞ」
「ありがとう、かなたさん!」
「お袋が気になってさ。バイトは2時間だけ顔を出した。お袋は部屋で、やすんでいるよ。有紀人はまだ塾なんだ」
「そうか。…肝心の兄さんは?」
「もうすぐ、帰ってくると思う」
あのヤロウ!……コンビニに行くとか上手いこと抜かしやがって!30分も帰って来ないじゃん!!
夜の9時だ。酒買って、フラフラしてんじゃないだろうな?
「ただいまー」、と声がする。
「お父さんだ!」
「おとーしゃんだ!」
「親父!遅かった…な?」
え。
えぇぇ!
「夜分、遅くにすみません。お邪魔します」
「あは。コンビニでプリン買ってきたよ。神城さんと、会ってたんだ」
「親父ー!!」
親父の後ろには眩い笑顔の廉也さんが立っていた。彼方さんの機嫌が悪くなる。
「こんばんは、木城さん。お世話になってます」
「ああ、神城くん。こんばんは。仕事お疲れさま」
雰囲気が重い。俺だけがハラハラドキドキ。……今夜は、俺と親父、廉也さん、彼方さんで話し合いとなりそうだ。
コトリ。淹れたてのコーヒーを4つ、ダイニングテーブルの上に置いた。春人と圭人は美味しそうに、彼方さんが買ってきたチョコレートケーキをいただく。テレビの前のローテーブルの上には、オレンジジュースも。
「俺の言いたいことは、わかるよな、兄さん?」
「お前なー。マジ怖いよ?ハイハイ、5人目は避妊しなかった俺の責任っすね~」
「晶人は来年大学受験だしね。経済的にも苦しくないか?」
うわ、彼方さんの問い詰めはかなり恐怖だ。マグカップを持つ俺は、黙ってきくしかなかった。
「お前の言うことはもっともだ。俺が不在の間、お世話になってたしな。あ·り·が·と·う」。親父は棒読みだった。失礼極まりない。
「まぁね。さすがに晶人たちを見放すわけにはな。ぜーんぶ、兄さんが悪い」
親父は黙る。本題はこれからだ。
「義姉さん抜きで大まかだが、今後のことを相談しよう。神城さん、あなたは部外者だ。少しの間、席を外してくれないか」
いえ。その。俺たち、付き合ってて。廉也さんは部外者ではない。
「木城さん。俺と晶人くんは付き合ってます。彼の力になりたい。俺もできる範囲ですが、手助けします」
「な、に?」
そりゃ、まぁ驚くだろう。彼方さん、面食らった様子だった。
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