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んなっ!?
ぶさ、ぶさっ────!!
…………。
はぁ、重いため息をつく。
「不細工で悪かったな」
「冗談だよ、あきちゃんは綺麗だ」
「……帰る」
もう、知らん!さっさっとこの場を立ち去るか。鞄を右肩に引っ掛け自然と早足となる。
そうだ、こんなヤツの相手をするほど俺には時間がないのだ。
「あきちゃぁぁんっ、バイト頑張ってっ。またあとでね!」
は?
お前はサッカーの練習だろーが。俺はバイトなわけだし。
…………。
やめやめ、深く考えないでおこう。
家が隣近所だからそう言ったのに違いない、『またあとでね』って。
こっちは毎日くたくたなんだ、会うつもりなんてまったくないよ。
校門を潜ると制服の上着の内ポケットからスマホを取り出した。弟の有希人に連絡を取る為だ。
「もしもし有希人?兄ちゃんさ、バイトの時間が一時間早くなっちゃったんだ。春人のお迎え、代わりに行ってくれないか」
電話口で待つ事、数秒間。
『えっえーっ!やだよ、俺!いきたくない、はずい!』
やっぱな~、予想していた通りだった。有希人の返事は当然、と言えばそうなんだろう。
中3の、しかも今年受験生の男の子が好き好んで保育園へお迎えに行くだなんて。
……嫌だよな。
(だからと言って)
「今日の夕飯がなしになるよ?お袋は仕事で遅くなるって言ってたし」
「………!」
半ば脅し気味に葉っぱをかけ、しぶしぶ『……ちぇ。わかったよ、あき兄』と沈んだ声が耳へと届いた。
「春人のお迎え頼んだからな?!」
電源を切り、制服の上着の内ポケットへとしまい込んだ俺は走って我が家へと向かう。
──早く帰って飯を作らないと!
時間がない、勿体ない!
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