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うわぁ……背が高い。
そんでもって、すごく格好いい。
涼しげな目元、少し薄めの唇も形が整っている。手や足のパーツが長く、頭の上から爪の先まで計算されたような完璧なボディーバランスだ。艶かな黒髪がサラリと流れていた。
本職は俳優さん?
それともモデルさん?
どっちなのだろう。
「あきちゃん、あーゆーのがタイプなの?」
「えっ?」
ぼけっと背の高い芸能人オーラ丸出しの神城さんに見惚れていた俺に、茂森の冷たい視線が飛んでくる。
「俺だってさ。俺だってあと5、6年もすれば背も伸びて大人の、格好いい男性になるよ」
へ?
茂森はどちらかと言えば『かっこいい』ではなくて『可愛い』部類だろ。
いや。
いやいやいや。
頭をブンブンと大きく振った。
俺の後ろにべったり張りつく、無邪気な笑顔を浮かべた『背後霊』そのものじゃん?
……ったく。
どこをどう取れば、現在のお前が将来、『可愛い→かっこよく』変身するんだ?
飲み干した缶コーヒーをゴミ箱に棄てようと立ち上がった。
───んが。
この『茂森』。
冗談抜きでマジにだ。
大学生の頃には俺よりも背が伸びて、大人びた雰囲気に成長しちゃってんだから――。それだけでもう不思議だよ。
「あきちゃん、あきちゃん。口から涎が出てるよ。高校生にもなってみっともなくない?」
「う、嘘?!」
慌てて空の缶コーヒーを持つ腕を上げ袖口を唇にあててみた。袖口で拭う俺に、茂森はニコニコと笑う。
「嘘だよ、うーそ。あきちゃん、すぐに引っかかかるからマジ面白いな」
───我慢がならなかった。
「消えろ!今すぐ俺の前から消えろ、どこかに行っちまえ!」
……自称(自称っていうところが悲しいが)気の長~い俺にも、限界っていうものがある。
スタジオから廊下へと繋がる扉を指さした。
「大体、お前はなっ。昔っから俺の邪魔ばかりしやがって。なんでいつもいつも……」
「あきちゃん、怖いよ。そんなに目くじら立てて怒ったら怖いって。後ろの人も驚いているよ」
後ろ?……後ろに誰が?
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